隣から醤油を借りられるか
いつの日からか、お隣の宅配便を預からなくなった。それは、不在通知なるものが郵便受けに入れられ、後で都合の良い時を伝えて届けてくれるようになったからである。
実を言うと、普段挨拶を交わすだけの隣人の荷物を預かるのは良いが、届けるという行為が嫌であった。だって、うちが預かった上、届けるってどうよ?だったら取りに来る迄待てば良いという話になるが、自分の物じゃない荷物が、いつまでもそこに鎮座ましましているというだけで、なんだか負担…だから隣のドアが開く音を聞くや否や持っていく、という事になる。
我が家には、季節の産物を送ってくれるような身内はいない。お中元お歳暮の付き合いもほとんどない。故に、宅配業者とは縁が無い家のはずだった。
だから、在宅の折、宅配業者の車が家の傍に止まるたびに、向こう三軒両隣がいない事がないよう祈っている事もあった。
しかし、今や、本の背表紙を目で追って探すのすらおっくうで、ネットで注文して届けてもらう生活である。お中元お歳暮に縁が無くとも、宅配のおじさんとセブンイレブンで会ったら、目で挨拶を交わすような間柄である。
先日、どこかの番組で、今時、隣から醤油を借りる事が出来るのか、という企画を観た。
空の醤油の入れ物を持参し、昔よく見た、
『お醤油切らしちゃって、ちょっと貸してぇ』
というアレを再現したらどうなるか、というもの。
言ってみると、案外貸してくれるものである…というか、呼び鈴鳴らされて、
『隣の○○ですぅ』と言われたら、ホントに不在か居留守を使う以外、出て行かない方がおかしい。その上、『醤油を貸してくれ』と言われて、断る方が勇気いりそう。
私が思うに、近所付き合いが希薄になったというよりは、醤油を使う段階になって無いという緊急を要した場合でも、野中の一軒屋じゃなければ、買いに行って間に合う環境にあるから借りないだけなのではないのか?
確かに、小さい頃、実家の並びの家がよく、何でもかんでも借りに来て、気前よく、かつ気持ちよく貸してやりながら、ドアが閉まった後に母が舌打ちをするのを聞いた。
母曰く、貸すのは良いが、帰ってこないものも多いし、貸したものより小ぶりの物が返ってくる、らしい。
『そんなの、あるっつーからいけないんじゃん』
しかし当時は、運転免許のない奥様は多かったし、買い物環境も今よりずっと不便で、一度帰ったら、明日以降じゃないと家から出たくないというのもわかる。だから、無いものは、とりあえず隣近所に聞いたのだろう。
こんな事を今更長々書いたのは、数日前に済んだお祭りの際、色々な人に助けられた事や、初めて自分の班のお宅一軒一軒廻って、お話をした事からである。
例えば、30軒の班員に対し、1枚500円の福引券を100枚預かり、普段1軒2枚ノルマ分しか買わなかった我が家であるが、実際にお宅を廻ると、最低枚数なのは数軒だけで、自分の家を入れないで100枚を完売した。
その上、どこかの家で1枚余分に渡してしまったのを、きちんと数えない自分が悪かったのだと負担していたら、お祭りの後に副班長さんにお金を届けて下さり、500円戻ってきた。。。奇特な人もいたものだ。
在住10年以上経ち、初めて班長さんを受けた私に、ベテランの副班長さんが
『班長しないと近所の人と仲良くなれないから』とおっしゃったのを、苦笑した私だが、今は、それもそうだと思ったりしている。
醤油は借りに行かないかもしれないが…。
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