『いっそ新しい所に、お引越しってのどう?』
と提案した私であるが、言うからには『ここ』か『ここ』ならという目星がついていた。
第一候補地。
駅から徒歩10分、年間管理料一律1万円。
墓石代・工事費・初年度年間管理料・基本彫刻費・永代使用料・消費税含んで96.25万円!但し0.4平米。
0.4平米と言えば、単純に四角い敷地だとして、幅約63㎝である。
長年自分達がお参りしてきた墓を基準に、63㎝を狭いと感じるかどうか、定規に向かって『前へならえ』をしたところで、想像つかないというのが正直なところ。
今の敷地がほぼ真四角の4平米。
4平米というと、幅が2m、砂利を敷いてある部分でカゴメカゴメが出来そうな広さの敷地である。
後々に引き払うような場合の他、納まる予定人数を考えても、そんな広さは要らないのだけははっきりしている。
尚、この霊園は、0.4平米(永代使用料28万円)~1.6平米(永代使用料128万円)迄、10段階の細かい設定である。
第2候補地。
駅から徒歩12分(とあるが、歩道が確保されていない割に多い交通量を考えると、実際あまり歩いて行きたくはない)。
土日のみ送迎車有り(とあるが、入口にある管理棟迄と予想する)。
1.5平米で、墓石代・工事費・初年度年間管理料・基本彫刻費・永代使用料・消費税等でオープン価格208.65万円!
こちらは1平米が最小となり、永代使用料は1平米につき60万円(だから6平米なら360万円)、年間管理料は、1平米につき8,820円(もしも6平米あれば52,920円)と、明瞭かつシビアな設定。
ちなみに、ここは総区画数7,500のうち、まだまだ空いている所の方が多く、オープン以来時々電話の勧誘を受けては、いつも丁重にお断りしていた霊園である。
実は、墓騒動が発端した彼岸最終日の翌日、日曜と月曜の2日かけて2箇所の霊園を比べてみた。
第一候補地は、霊園として大変小さく、まず今後の運営がどうなってゆくのか気になる所であったが、実際に行ってみてわかったのは、実はここは、元々古くからある寺で、普通の墓地も持っている。
『近所の方がお墓がないって困ってらして』
と空いていた土地に管理業者を入れて、宗派自由の霊園を開いたとのこと。
今のご住職がおやめになっても、他から派遣されてくる古いお寺であるらしい。
駅からは、ほぼ平坦な道のりで、最後の20m程が、私の住む地域からは切っても切れない縁の坂道である。
訪れた日、何の気なしに曲がって登ろうと思ったらマフラーを地面に擦った傾斜角度だと言えば想像がつくだろうか。
さて、いきなり勧められたのは1.5平米の『ゆとりタイプ』。
次に紹介されたのが同じ1.5平米でも『一般タイプ』。
敷地の幅いっぱいの洋型墓石を目の前にすると、かなりデカいと同時に圧迫感を感じる。
しかも、墓石と墓石の間に、誤って何か落としてしまった日には、永遠に取り出せないかもしれない『隙間』と呼ぶにふさわしい間である。
『ゆとりタイプ』というのは、隣の敷地との間に緑を植える『ゆとり』の空間を設けたもので、墓石の幅が『一般タイプ』よりも狭くなる分、石の体積も小さくなる。
従って、墓石の金額に『ゆとり』が生まれるというものであった。
墓石代の広さによる金額の一覧表を見ていて、同じ平米で、普通『一般』より『ゆとり』の方が高いと思われるのに、何故逆なのか、謎が解けた。
墓石業界全体がそうなのか、たまたま同じだったのか、第二候補の地でもそういう表現をしていた。
では、問題の0.4平米とは、どれ程のものなのだろう。
『せっかくですから、どうぞどうぞ』
と案内されて前に立ってみると、なるほど、確かにコンパクトである。
骨壷の定員は2名様迄だそう。
さすがにこれでは小さいと思ったが、今はご夫婦だけしか入る予定がないという方もいらっしゃるから、割り切った大きさであるらしい。
骨壷としては二つしか入らないが、納骨の部分には必ず1ヶ所、土の部分を設けているので、小さくなった先代の遺骨は土にお返しすることで、人数は増えてもある程度は大丈夫なのだそう。
現在の我が家の墓は、『芝台』とも呼ばれる『下台』の上にピラミッド状に『中台』『上台』、そして○○家とか彫ってある細長い『棹石』が積んである『和型』と呼ばれるもので、納骨は墓石より下、地中となるが、今はそういった形は主流ではないらしい。
積んだ墓石の一番下の部分を空洞とし、コンクリート敷きの納骨堂となっていて、その一番手前に、先程記した
土に返す部分を残して造る。
霊園の基礎を全てそうしている為、物理的に今使っている墓を持ち込んでは使えない。
色々見せて戴いて、大体どれくらいの広さが適当なのかの見当もついてきた。
『この位でいいんじゃあない?』
と思えたのが0.8平米のゆとりタイプ。
骨壷数で言えば4人分だそう。
義父・義母・主人に私。
『ジャストサイズじゃん』
『ぇえええ・・・』
自分が頭数に入っていない事を知る娘の声。
『ええって、あんたは嫁に行かないのかい?』
ってか、若い美空で墓に入れるかどうか心配するより先に、とりあえず高校へ入る事を考えて欲しい。
後は、墓石の種類とデザインによって上物の金額が決まる。
建立者や家紋、○○家といった表面の彫刻までは基本料に入っているが、角を面取りしたら10万、卒塔婆立て付ければ10万という具合に、いくらでも金額は上がってゆく。
こういった物は、上限を決めておくというのが鉄則である。
細々雑費含んでも、200万は絶対に越えてはならない。
一応、第二候補地の事。
売りは、先に記した通り、1.5平米で『ゆとりタイプ』の208.65万円だが、こちらの1平米区画には『ゆとりタイプ』が用意されておらず、敷地を1平米に抑えると総額は231.15万円と返って高くなる。
1平米なら年間管理費は8,820円だが、買う時安く1.5平米にした場合、年間管理費は13,230円、50年管理していただくと年間管理費の差額で高い方の墓石分を払い終わる計算である。
いずれにしろ200万越えなので、却下。
しかしながら、ここに足を運んだお陰で、『遺骨救済計画』が立ったので収穫は大きい。
というわけで、ゆとりの金額で事が進みつつある紫家。
必要書類が揃ったら、結婚した時には既に土の下にお隠れになっていた義父との対面も間近なのであった。
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