お水の話が一段落して、再びKさんから連絡があったのは、今年の3月の頭である。
Kさんは、最初『微酸性次亜塩素酸水』の生成器の販売ツールである、パンフレットのイラストを私に依頼してきたのだが、今回は、その美容法を広めるべき『キット』を作ろうという企画である。
電話で簡単に説明をした彼女は、その箱の表紙を私の絵で飾るのだと言う。
『全国デビューですからっ。是非頑張って戴きたいんです!』
Kさんの声にはかなりの力がこもっているのだが、私には、軽くとか、簡単にとか、あんまり自分の作品に力の量を加減する腕はない…。
いつもそうなのだが、出来上がったものと、それに費やした時間というのが比例することは無く、わかっちゃいるのに、つまらない所にこだわってみたり、しゅしゅっと描きあがったものに意外な評価があったりする。
今回も、前回Kさんに納品した『顔』の中で、Kさんも私もお互いが気に入った『顔』というものがあった。
それは私が『フルハート』という名前と、その本質を受け入れた時に、ポンと頭に広がったイメージで、他のどの作品にかけた時間よりも短いけれど、確実に思い入れがあるものに仕上がった。
それが伝わったのだろうか、Kさんは、次の工程を依頼するときに『この女性』を様々なシーンに登場させて下さい、と言う。。。とほほ、漫画家目指した頃を思い出すじゃないか…。
ともあれ、それでいくつかのパターンが出来ていた、と言えばそうなのだが、今回、改めてKさんが私に求めてきたのは、まったく異なったイメージなのであった。
フルハートのイメージとして、自然のモノを味方につけて、自分を磨くというものがあって、どうしてもナチュラルな飾らない場面が思い浮かび、なるたけ身に着けない素肌を強調したくなるのだが、今回は『微酸性次亜塩素酸水』の生成器を元々売る側にいる方からの要望で、『創り上げた女性』にして欲しいそうだ。う~ん…。
しかし、何も『創り上げた』と言ったって、アンドロイドを描けをいうわけじゃなく、フルハートでこんなに綺麗になったから、さぁお化粧もきっちりして、どこ行こうかしらって場面であるという。なるほど…。
何枚かデッサンし、Kさんに投げるのだが、Kさんは『とっても良い』と言いつつ、イマイチの反応である。
今思うと、私にも咀嚼しきれない部分があったのかもしれないのだが、実はKさん自身にも色々迷いが生じていたらしい。間もなくKさんから連絡があった。
『私、やっぱり自分を信じる事にしたんです!』
Kさんは、元々『微酸性次亜塩素酸水』の生成器を売る側にいる方との取引を終えたのを機会に、自分が最初インスピレーションを感じたモノを使いたいのだと言う。
それが、あの、お互いに気に入った『顔』の女性である。
『この女性に加筆して下さい。花を周りにちりばめてくれると嬉しい。』
Kさんの良い所は、必ず自分のイメージを図式化及び実体化してくれる点である。言いたい事が的確に伝わってくる。但し、それを拝見すると、大変男前な部分を感じたりする。。。
今回のキットの箱のイメージは『お菓子箱』なのだと言う。

美容室に訪れた人が『これは何が入ってるのかしら』って思わず手に取ってくれるのを願うそうだ。発想を聞いている限り、すごーく女性らしい。だから私は、その女性らしさを生かさなければならない使命を、ひしひしと感じた。
そして、出来上がったのがこれであるが、フルハートが、これから波乱万丈な道をゆく始まりに過ぎなかったなんて、Kさんも私も、まだ夢にも思わない頃であった。
以下次号。
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