あぁ親ばか
大騒ぎの内に迎えた娘の面接受験の日は、映画ワンピース『STRONG WORLD』初日でもあった。
テレビのワンピースは毎週日曜日を楽しみにしているのだが、映画を毎回観に行く程の熱狂的なファンというわけではない。
今回行こうと決めたのは、そこで貰える『0巻』欲しさに、娘から誕生日プレゼントとしてねだられていたからである。
いつも観に行く映画館は、毎週木曜日に、翌1週間分の席を購入する事が出来る。
思えば、この木曜日に多少無理をしてでも買っておくべきであったのだが、まさか、あんなことになるとは予想していなかったので・・・・・・。
初日の土曜日に、家族で映画を観る事が出来る時間帯は、限られていた。
午前中の娘の受験時間と、居酒屋の開店時間から始まる主人の忘年会の間の回しかなく、前日金曜に窓口へ行ったら、
『その回の予約席はもう完売しております。どうしてもその回を観たい場合には、当日早めに来て購入して戴くしかありません』
げ・・・。
『えっと、当日って、ここが開くの何時でしたっけ』
『8時45分です』
私がとった作戦は、朝窓口が開く時間迄にここに来て、チケットを購入した後、10時半からの保護者同伴の面接受験に出て、めでたく14時代の映画を観る、というものだった。
保護者は父母いずれかで良いのだが、主人も行きたいと言っていた。
面接は俺が行くよ、とひとこと言ってくれると丸く納まるのだが、一緒に行きたい、ここが面倒臭いところであった。
ま、受験票と本人と片親が揃っていれば、なんとかなるだろう。
後で合流するからと、私は朝8時に、受験する学校とは反対方向の電車に乗る為にホームへ向かうのであった。
ところが、土曜の8時過ぎだというのに、ちょっと人の数が多い気がする。
青少年の数人組、小学生を連れたお母さん・・・そして、聞えてくるのは『ワンピース』の話題・・・。
だからと言って、誰もが今日の2時に観たくてここにいるわけではなかろう。
しかし、映画館のある駅で降りる人数を目の前にして悟った。
・・・これは、大変なことになる!
とりあえず、タラタラと歩く人の波をかき分けるようにして駅を出て、年がいも無く走り、映画館のある建物に続く陸橋を登り終わった瞬間、仰天した。
まだ建物の開店していない時間帯なので、映画に行く場合には、エレベータを利用するしかなく、そのエレベータのある方角から人が並び、私が登った陸橋から別の階段に一度落ち、再び登り、歩道に続く階段を下り、歩道にもずっと列は伸びていた。

げげげ・・・。
この時点では気付かなかったが、販売開始時間前からズルズルと列が動いていたという事を考えると、既に建物内に渦巻けるだけ渦巻かせていたと思われる。
それでも、私からエレベータが見える位置に進む迄に1時間と少し要し、もう店が開く時間を迎えつつあったので、列の先頭を非常階段に誘導するところだった。
開店時間ということは、10時。
今から面接には間に合わないが、それは主人が行っているのだから別に何の心配もない。
同伴は自分ひとりだと知った主人は、もしかしたら娘以上に緊張しているのかもしれないけど、それも経験であろう。
だけど、面接に行かなくても良かったのなら、何もスーツ着て、ヒール履いて来る必要はなかったのである。
運動靴ならさぞや楽だったろうに・・・。
この日だけ春のように暖かいでしょうという天気予報通り、日向にいればそう辛くもなかったが、薄手のコートとストッキングの足に、風が冷たくないわけではなかった。
幸い、外で並んだのは1時間ちょいで済んだし。
でも、結局『明日14時』のチケットを手に入れたのは、並び始めてから4時間半が過ぎた頃であった。
当然、建物に入って間もなく、当日分の席は完売し、皆、明日以降の席を取る為に、まだ建物の外に迄並んでいるわけだ。
それもこれも、このペランペランの『0巻』の威力であろう。
18日分迄は確保しているときき、安心して帰る人もいたが、だいたいが、ここ迄待った意地でいるのだと思う。
家に帰ると、余程緊張したのか、娘は昼も食べずに義母の部屋で寝こけていた。
その顔を眺めて、ほんと親ばか・・・と思う私であった。
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